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【読書感想】「かぐや姫三世」 松田志乃ぶ·作

【読書感想】

題名:かぐや姫三世 わたしを月まで連れていって!
作者: 松田 志乃ぶ
発売日:2016年4月28日
 
 
購入理由は、作者様のファンだから。
「悪魔のような花婿」「嘘つきは姫君のはじまり」シリーズが大好き。
「キスと帝国 漂流王女ヴァージニア・ナイトの結婚」「わたしの嫌いなお兄様」もすごく良かった。
「わたしの嫌いなお兄様」は、ぜひ続編が出て欲しい。という位好き。
 
しかし今回の「かぐや姫三世」は、今までの小説と毛色が違うように感じられた。
よって本自体の感想の前に、作者様語りをさせてください_(._.)_ 
 
かぐや姫三世」の感想は下の方へどうぞー。(ネタバレほぼ無/あとがきの引用は有)
 
 
 
作者様の作品の好きなところ
*地の文がしっかりしていて読みやすいところ
*どの登場人物も魅力的で、何をしていても微笑ましく見てしまうところ
*平安ものの少女小説としておもしろさが成立しているところ(平安貴族生活のきらびやかさや祭事の扱いがそのまま魅力としてうまく生かしてある)
*洋風の少女小説でも同様に素晴らしい世界観設定
*脇役たちもキャラ設定がしっかりしていてメインストーリーをひきたてる
*甘い恋愛模様が抜群にうまい
 
 
作者様の素晴らしいところは沢山あるけど、2つにしぼるとするなら以下2つ。
 
1. 恋愛ストーリー
作者様の恋愛ストーリーは甘い。
その甘さは糖度が高いのに下品でないところがいい。
若者向けの「糖度が高い」恋愛小説だと、すぐにおフェロ方面でがんばる小説になって、私としてはおもしろくない。
作者様のような恋愛糖度が高くておもしろい小説がなかなかないので、作者様にはがんばって沢山少女小説を書いて欲しいのです……。
 
この甘い恋愛模様が、シリーズの中で少しもだれずに、毎回盛り上がりどころがあるのが素晴らしい。
 
 
2、文章力の高さ
地の文が自然で読みやすいのはもちろん、衣装や自然の緑の美しさなどの描写が巧みで、少女小説として素晴らしい出来になっていると思う。
子どもや動物なんかの、無垢な生きものの取扱いもうまいと思う。
毎回そのあざとさにやられてしまう。
 
とにかく松田志乃ぶ先生が好きなわけですよ。
 
そんで念願のコバルトから作者様の新刊がやっと出たので喜んで購入。
 
 
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読後の感想。
 
この本が、普通の作者様の新刊とは違うと思うところをいくつか。
それを知った上で読んだ方がいいのではと思うので。
 
1. 長編ではなく中編小説
目次を見るとわかるのだが、この文庫本は100〜160ページの中編小説2つがおさめられている。
更に今ならwebコバルトで、このシリーズの新作短編小説が読める。
 
えっとつまり……どゆこと?
 
読み終えてみると、どうやらこれはシリーズ化することも想定されている様子。主人公はゴールにたどりついていないし、恋愛は始まってもいない。
 
この1冊ですべてが解決されると思って読むと、あれっ?となると思うので、事前にご了承ください。
 
 
シリーズものの中編小説2つだと思って読むと、主要人物の性格や心情の変化が少しずつわかるさまはおもしろく、良いペースだと感じられる。と思う。
 
作者様の小説はよく謎解きが入るのだけど、今回も和風のおとぎ話がからめてあっておもしろかった。
2つの中編小説それぞれに盛り上がりがあり、それぞれきちんとオチがついている。
 
ただし作者様ファンはよくわかっていると思うけど、謎解きと言っても普通のミステリとは違う。
作者様の小説は、恋愛やギャグ、和洋世界の祭事や生活のおもしろさ、たくさんの要素が入った小説なので、謎解きはあくまでその一要素であり、メインではないのだ。と思う。
ミステリがメインだと思って読んじゃうと、謎の解決が小説の後半も後半、終わりにあることに違和感を感じるかもしれない。そこはご注意を。
謎解き以外の要素も楽しんでくだせぇ。
 
 
ちなみにもっとかぐや姫たちの活躍を見たいという方は、webコバルトの短編小説を読みに行ってはどうでしょうか。
すっごく短いドタバタ小話なので、この本の中編小説とはまた違う雰囲気だったけど、姫と円野のかけあいがかわいかった。
 
シリーズ化するかどうかは明言されていないで、この短編も文庫収録されるか不明。
ぜひ書籍読了後にwebも読みに行って欲しいです。
 
 
 
2. 文体の変更と読者層
 
この小説、一人称です。
 
前作までの小説は、三人称を使った文体だった。三人称を使いながら、実質1人の視点から見た描写だったけれど。
 
一人称だけが文体の変更点ではなく。
 
なんか、全体的に今風の小説にマイナーチェンジしてる。※個人的意見です。
 
古典用語使ったとき、今までなら無理のない程度に描写してフォローしていたところを、
 
瓔珞(耳飾り)
宗主(支配者)
 
といった具合にかっこで説明している。
私なんか古典用語に詳しくないから、わかりやすくなったと良い意味で受け取れるし、きっと今後慣れていくと思う。
 
しかし、文体がほんの少ーし変わったと事前に意識しておいた方がいいかも。
 
決して幼稚になったわけでも、読みづらくなったわけでもない。
 
ただ、若い読者層も意識しているのかな、という印象なだけ。
 
普段平安もの小説を読まない人も楽しく読めるお話になっていると思う。
もちろん普段平安ものが好きで読む人も楽しめるはず。
平安貴族の食事や衣装の描写は、さすが。
さらに月世界の生物や食べ物の描写が時々出てきて、無理なく自然に溶け込んでいるのは、良いスパイスとなっていて、今後も楽しみなところ。
「星雲」のような美しい言葉も好きだし、「ゲスガエル」のような作者様らしいギャグ要素も好き。
 
以上2点は、この本を読む前にご了承いただいた方がいいのではと思う。
 
小説の内容自体は、今後に期待。
 
主要人物3人はみんな好き。
 
※以下、キャラ性格軽くネタバレあり。
 
かぐや姫三世は真面目な性格と話し方が好きだし、今後恋愛や人間生活を通して、たくさん問題に立ち向かう姿を見たい。
そして天然の魅力を振りまいていって欲しい。
多分周りがその魅力にやられまくると思う。
月世界では不遇そうで、その他弟妹エピソードにも期待。
 
 
倉持皇子は好みだわー。けち、じゃなかった倹約家で苦労してる皇子さまって、好きになるしかないじゃん。貧乏で苦労性の皇子って良い。もっと振り回される姿を見たい。
 
 
帝はこの本で一番魅力を発揮した人ではないだろうか。
やっぱ作者様は無垢な人を書かせるとうまい。帝はこの本の中で何していても愛らしかった。ばかってかわいい。
 
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以上ネタバレ終了
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他の脇役も好き。
さすが松田先生、どのキャラも魅力的なんだよー。
ただし、とにかくメインストーリーが進んでいないので、これからのキャラ達の活躍に期待、というところ。
 
ちなみにこの本で一番テンションがあがったのは、あとがきのこの一文。
「少しずつ刊行ペースを戻していけるようがんばります」
 
このお言葉を読んだとき、めちゃくちゃガッツポーズした。
最近新刊少なくて、どうしたんだろうって心配だったから。
もう少女小説やめちゃうのかなって不安だったので、今後がありそうですごくホッとした。
作者様の小説は本当に大好きだし、才能あふれる方だと思うので、新刊を楽しみに待ちたいと思います。
 
 
「キスと帝国」と「わたしの嫌いなお兄様」も続編出て欲しいなー。きちんと1冊でお話完結してるから、ムリなのかなー。かわいいお話で大好きなので、また作者様の次回作を待つしかないかー!
 
愛があふれて長文になってしまいました。
最後まで読んでくださった方がいたら、ありがとうございますm(_ _)m
 

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